保険選びなら 生命保険の総合代理店ベネフィットコモンズ

医療保険は終身タイプにすべき?
10年更新タイプではダメなのか・・・?
1990年代でも一部の保険会社では終身タイプの医療保険が販売されていましたが、多くの保険会社では取扱がなく、医療保険といえば保険期間10年の更新タイプ、あるいは保険期間60歳まで、長くても80歳までという商品の中から選択するのが一般的でした。 その背景には、1960年代に始まった老人医療の無料化の時代から、その後若干の負担は生じるようになってきたものの、1990年代当時の老人保健法では、高齢者の医療費自己負担は低額に抑えられていたことがあり、民間の医療保険は現役世代のものという位置づけが強く残っておりました。

もちろん2000年以前にも、将来の高齢者福祉を不安視する見方はありましたが、2000年に高齢者の医療費が1回数100円の定額負担から1割の定率負担(上限あり)に変更され、リタイア後の医療費負担に対する自己防衛意識が広がり、現在では多くの方が何らかの準備をしておかなくてはいけないと考えているようです。

以上のような高齢者医療に関する社会保障の変遷から、21世紀に入って、多くの保険会社が終身タイプの医療保険を発売するに至り、その販売件数を伸ばしてきているのは当然の流れかもしれません。病気になる確率の高い高齢時にこそ終身タイプの医療保険で安心感を得たいという消費者の方々の気持ちも良くわかります。

ただ、ここでは、もう少し原点に立ち返った議論をしてみたいと思います。 保険はあくまで経済的リスクへの対応手段であり、保険に入ったから病気を予防できるわけではありません。 したがって、保険に加入した以上は、ある一定以上の不幸な出来事(医療保険で言えば入院や手術)が自分の身に起こったとき、支払った保険料以上の金額を受け取れるものでなければ、経済的リスクに対処するという目的を達成していないといえます。 このような視点で、終身医療保険を今一度見直してみましょう。

30歳男性の人が以下のような終身医療保険に加入したとします。

【表1: 終身医療保険契約例(A社)】
契約年齢・性別 : 30歳男性
入院給付金日額 : 5,000円
一入院給付限度日数 : 60日 (注1)
通算給付限度日数 : 1,000日
手術保障 : あり
保険期間 : 終身
保険料払込期間 : 終身
死亡保障 : なし
解約返戻金 : なし
月払保険料 : 1,640円
80歳まで生存し契約継続した
場合の支払い保険料総額 :
984,000円

(注1) 一入院給付限度日数とは、一回の入院に対する給付日数の限度をいい、多くの保険会社では、同じ傷病や医学的関連のある傷病にて再入院した場合は、間隔が180日以上空いていないと連続した一回の入院とみなすよう規定しています。

表1の契約例で、80歳というほぼ平均的な寿命を全うした場合を検討します。生涯に支払う保険料総額はちょうど50年間継続として984,000円ですから100万円前後の保険料を支払うことになります。 したがって生涯の収支で評価すると、もし手術を伴わない入院であれば、約200日分の入院給付金を受け取れば、支払い保険料を上回る金額を得ることができる、すなわち保険に加入していて経済的に助かったということになり、払った保険料より受け取った給付金が少なければ、保険加入ではなく単に保険料分の貯金をしていればよかったとなります。

200日分の入院に相当する給付金とは言っても、表1の契約では、1回の入院に対する給付は60日までという制限(注1参照)がありますので、給付対象手術を伴わない単一傷病による連続入院では受け取ることができず、この制限のために、生涯受け取る給付金が、支払い保険料を上回るケースは限定されています。 健康で一生を通じて入院がごく短期間ですんだという人の場合は、保険料を支払っただけでほとんど給付金を受け取らなかったとしても保険とはそういうものだとして納得ができるでしょう。 一方、不幸にも通算の入院生活が長かった人でも、生涯支払う保険料を上回る給付金を受け取る可能性が限定されているということは留意すべきといえます。

また、表1の契約例で、30日入院した場合に受け取れる給付金は15万円、一入院給付限度日数最大の60日分の入院給付金は30万円です。 リタイア後のライフプランという広い範囲を視野に入れると、たとえば、余裕ある生活を送るためには公的年金以外に毎年100万円程度を使えるだけの貯金を準備したい、リタイア後の生活は20年続くと想定したとすると、その人はリタイアまでに2000万円の金融資産を準備すべしとなります。 前述の入院保障の15万円~30万円のいう金額はそれに対して2桁小さい大勢に影響のない金額と言えます。

したがって、長期的な経済収支、リタイア後のライフプランなどを総合的に考慮した場合、必ずしも終身タイプの医療保険を選択するのではなく、若年層の人が医療保険は余裕ある貯金ができるまでの一定期間の保障と考え、10年更新タイプの商品を選択することにも合理性がありそうです。 また、若いときからすでに余裕資金があるなど、いざというときの医療費に不安のない人であれば、医療保険に加入しないという判断もあり得ます。

表1では、記載のとおり、死亡保障や解約返戻金のない医療保険を例示しましたが、死亡保障や解約返戻金などがある医療保険の場合には、同じ趣旨で検討しても結論が異なる可能性があります。 同様に過去に契約した保険の見直しは、同種の保険でも、予定利率などの保険料計算に使われた基礎率が今の商品と異なることがありますので、長期的な収支を評価軸とする場合は、保険商品や契約条件ごとに生涯の保険料支払い総額やその対価である保障内容、解約返戻金などを計りにかける必要があるでしょう。

以上は長期的な収支やライフプランという視点を重視した検討を行いましたが、保険加入の目的はさまざまであり、たとえば、医療保険には、傷病という身体的なリスクと、医療費負担・貯蓄取り崩しという経済的リスクとを分離する、すなわち身体面と経済面のそれぞれの悪い出来事が同時に発生しないようにするという効果が期待できます。 同様に、医療費という突発的出費を平準化する効果があります。 よって、長期的な収支よりも、日々の生活のさまざまな局面で安定を求める場合は、医療保険は有効な解決策となり、その安定を終身継続させるという点で、終身タイプの医療保険は魅力があると言えます。

このように、保険に求めるものは何か、長期的な経済収支か、それとも日々の安定かによって、終身タイプの医療保険に対する価値観は変わってきます。 保険検討中の皆様には、ご自身の加入目的を再確認していただくとともに、各保険商品の保障内容や月々の保険料負担だけでなく、生涯的な保険料支出を含めて検討し、より良い保険選択をしていただけますことを願っております。